複数台のカメラで撮影した映像の色調を統一するためにカラーコレクションを行う

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まえがき

カメラを同時に複数台使用して撮影を行うマルチカム撮影を行うとき、低予算映画では同じカメラを何台も用意することができないことがあります。その場合、カメラによって得られる映像の色調が変わり、編集すると違和感を覚えることが少なくありません。

この記事では、映像の色調を操作するカラーコレクションとカラーグレーディングの違いについて述べます。次に、二つの色調の違う映像の例を参照しながら、映像の色調を統一する方針の立て方について説明します。その後、コンピュータを使った、様々な色調で撮影された映像の色調を統一する、カラーコレクションの方法について述べます。

用語について

わたしたちはこのホームページにおいて可能な限り外来語の使用を回避する方針を立てています。ただし、この記事で取り扱うカラーコレクションとカラーグレーディングについては、あまりにこの外来語の使用が多く、またわたしたちの訳語が巷で使われる言葉を想像しにくいであろうという判断から、外来語をそのまま使用しています。

カラーコレクションとカラーグレーディング

編集段階、またはそのあとの段階において、映像の色調を操作する処理をカラーコレクションまたはカラーグレーディングといいます。この二つは処理としてはかわりませんが、その意図が違うために呼び分けられています。

カラーコレクションは英語でColor correctionと書き、これは「収集」を意味する「コレクション」のcollectionとは違う綴り方をします。日本語に訳すと「色補正」という意味になります。こうすると簡単にわかりますが、カラーコレクションは収録された映像の色調における失敗を補正して整えようとする処理のことを指します。

これに対して、カラーグレーディングはColor gradingと書き、グレーディングには「(色などを)ぼかす」という意味があります。日本語に直訳すると「色ぼかし」という意味になりますが、実際の様態を考えると「色仕上げ」と呼ぶべき作業のことです。これは、演出意図に合わせるために、撮影された際の色調を操作する行為です。

この記事では、複数種で撮影したことによって発生した、色調の破綻を補正することが目的のカラーコレクションを行います。

状況を判断して、方針を立てる

撮影された二つの映像の比較
撮影された二つの映像の比較

左側の映像に比べて右側の映像は全体的に橙色になっていて、彩度も高く、この二つの映像を同じ場面で使用すると違和感があることが明らかです。

カラーコレクションを行う前に、その対象となる映像の色調にどんな差があり、またどういった手順でその差を埋めていくかについて考えます。

上に示したこの記事で利用する二つの映像は、彩度が大きく違い、また色合いも若干異なっています。この二つの問題を修正すれば、大分色調の差はなくなります。

この色調における問題を修正するためにわたしたちがとれる手段は3つあります。

第一の方法は、左側の映像の彩度を高めて、全体的に橙色へ色合いを変化させる方法です。

第二の方法は、右側の映像の彩度を落として、全体的に緑色へ色合いを変化させる方法です。

第三の方法はどちらにも合わせず、新たに目標とする色調を設定し、その色調に二つの映像を合わせる方法です。

第三の手法はどちらかというとカラーグレーディングに近い手法になります。そのためには二つの映像に対して補正で実現可能な範囲内で、満足のいく色彩設計を考えなければならず、大変な労力を要します。そのため、この記事の範囲を超えていますので、選択肢から排除します。前者二つのうち、短い時間で最良の結果を得る方法は後者です。低い彩度を高くして二つの映像の色調を合わせようとすると、色合いの差がより顕著に表れ、画質を破綻させずに補正することが難しくなります。これに対し、高い彩度を低くして二つの映像の色調を合わせる場合は、色合いの差はそれほど大きく現れませんので、比較的楽に色調を統一することができます。

ここでは、右側の映像の彩度を低くして、全体的に緑色へ色合いを変化させます。

コンピュータ上でのカラーコレクション

コンピュータで行うカラーコレクションでは、主に色合いと彩度および露出を操作します。

カラーコレクションを行うソフトウェアにはいくつか種類がありますが、この記事ではFinal Cut Pro Xを利用しています。

片方の映像の色調をもう片方の映像の色調にすり寄せる

作業を効率化するために、目標となる色調の映像のフレームを書き出して、編集画面とは別に表示しておきます。複数枚の画面があると、非常に便利です。

補正の目標となる映像の表示
補正の目標となる映像の表示

まず、予定通り、右側の映像の彩度を全体的に削減します。実際には、色調の変化を見ながら調整していきます。これにより、かなり二つの映像の色調が近くなったことがわかります。

彩度の調整の結果
彩度の調整の結果

しかし、まだ若干の差があることも事実です。全体的に明るいことが明らかになったので、露出を絞ることにします。今回の例では、全体を均一に絞ると良い結果が得られなかったため、明るさごとに絞る量を変化させました。

明るさごとの露出の調整
明るさごとの露出の調整

くわえて、彩度も明るさごとに再調整しました。

明るさごとの彩度の調整
明るさごとの彩度の調整
露出の調整と彩度の再調整の結果
露出の調整と彩度の再調整の結果

二つの違う色調の間にある適当な色調にあわせる

右側の映像の色調を操作するだけで、もう左側の映像と色調を揃えることができればよいのですが、実際には困難です。存在しない情報は回復できないため、左側の映像も調整して、二つの映像の色調を統一していきます。

この例ですと、そもそも右側の映像の階調幅が少なく、露出を調整する前から、背景は闇に沈んでいました。しかし、左側の映像は、背景が若干灰色気味に明るく写っていました。そこで、もう左側の映像の暗部の露出を4パーセントほど絞って、背景を闇に沈め、色調を統一します。

左側の映像に露出の調整を行った結果
左側の映像に露出の調整を行った結果
露出の補正を終えた結果の比較
露出の補正を終えた結果の比較

彩度と明るさが統一されて来たので、最後に色合いを調整します。左側の映像を続けて調整し、明るさの中間部と暗部に1パーセントから2パーセントの橙色に変化させる色合いの調整を行います。

右側の映像に色合いの調整を行った結果
右側の映像に色合いの調整を行った結果

最後に同じく数パーセント、右側の映像に明るさごとに色合いの調整を行って、完成です。

明るさごとの色合いの調整
明るさごとの色合いの調整
カラーコレクションの結果
カラーコレクションの結果

自動で色調を合わせる機能

自動で色調を統一する機能によって、二つの映像の色調の統一を試みた例
自動で色調を統一する機能によって、二つの映像の色調の統一を試みた例

編集ソフトウェアによっては自動で二つの映像の色調を合わせる機能がついていることがあります。その機能の性能と入力する映像によっては、手作業で補正するよりも良い結果を簡単に得られることがあります。ただし、そういった機能を使う際でも、何時でも手動で補正ができるように時間を確保しておくべきです。自動化は作業時間を短縮する大変便利な道具ですが、失敗することもあります。どんな道具を使うときもそうですが、その性能や特性について、よく把握しておかなければなりません。

むすび

この記事ではカラーコレクションとカラーグレーディングの違いについて述べました。実際の映像を使用して、コンピュータ上でのカラーコレクションについて説明しました。

この記事は「2013年度試験映像製作計画」の成果を元に書かれました。映像でモデルを担当しているのは林まりえです。