嘘をつくために手技の程度の低さをごまかしつつ、アニメ風イラストを描く

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まえがき

2014年の4月1日にはわたしたちもエイプリルフールを楽しむことにし、アニメの製作を発表しました。その時のこのウェブサイトのトップページはこちらから見ることができます。

この記事では、まず、アニメ風の絵を描くための資料集めにおける注意点を解説し、続いて必要な道具の調達について述べ、絵を描くための手技の程度が求められる程度に達しない際に、これに対し技術的に対抗する方法について記します。

資料を集める

まずは、参考になる資料を集めます。絵を日常的に描いていない、あるいは、より品質の高い絵を描きたいとなったら参考資料は必須です。

参考資料が役に立つのは「どうアニメ風に描いて良いかわからない」というときです。以下にその例を示します。

どう描けば良いかわからない部分の例
どう描けば良いかわからない部分の例

参考資料となるのは、アニメの原画集や設定資料集ですが、その選び方に注意が必要です。もちろん実際に描く絵柄に近い原画集や設定資料集を収集するのが原則ですが、設定資料集という題の本でも、実際の設定資料を縮小して並べただけの愛好者向けの観賞用としての本が数多くあり、特にこのような用途では実用に耐えないことがあります。しかし、一部の設定資料集はおそらく実際の設定資料の複製をそのまま製本したような情報量を誇ることがあり、このような本は大変有用です。例として翠星のガルガンティア PROGRESS FILESが挙げられます。

道具を調達する

下書きやクリンナップを紙とペンで行うか、すべてコンピュータ上で完結させるかにもよりますが、いくつかの道具があると作業が効率的になります。

スキャナ

平面の天板に紙をおく型式のフラッドベッドスキャナでも、紙を移動させて読み取る型式のシートフィードあるいはドキュメントスキャナでも構いませんが、紙とペンで描いた絵をコンピュータに高い品質で取り込むためにはスキャナが必要になります。

ペンタブレット

作画をすべてコンピュータ上で完結させる場合は、ほとんど必須と言って良い装置がこのペンタブレットで、マウスの動作をペン型デバイスで表現するものです。大きさなどは使いやすいものを選べば良く、このような用途の場合、筆圧感知はほとんど必要としないため、どれを選んでも大差ありませんが、ペンが軽いと作業が楽なため、静電結合方式のものを強くおすすめします。また、ペンタブレット付属のペンは柄く、日常的に使うペンの感覚とは違う場合があるため、必要であれば細い柄のペンを追加調達することをおすすめします。

なお、液晶画面に直接描ける型式のペンタブレットは大変便利ですが、極めて高価なうえ、誤差が無視できないこともあり、強くおすすめできるものではありません。

ソフトウェア

専用の作画用ソフトウェアは、作画技術を機械的に補助してくれるため、大変便利です。様々な製品がありますが、今回はCLIP STUDIO PAINTを使用しました。

片手用キーボード

ペンを握って作業している場合、キーボードが使いづらくなり、ショートカット入力が難しくなるため、このような特殊な、作業用あるいはゲーム用キーボードがあると、作業を効率化できます。

なお、このキーボードは大変便利ですが、左手用に特化した形状のものもあり、左利きの場合、これを調達してしまうと、残念な結果に終わることに注意が必要です。

「絵が下手」に対抗する

絵を描くにあたって最大の難関は、絵が下手という個人の手技上の問題です。アニメは実写と違い、極めて手技への依存度が高いため、これを技術によっていかに削減するか、ということが高い品質を簡単に得るための重要な課題となります。

以下に、問題とそれへの対処法を記します。

物体の形を捉えられていない

問題

もっとも致命的かつ、対処の難しい問題で、根本的な問題です。

対処

練習以外に方法はないかに見受けられますが、いくつかの手段を用いて対抗することが可能です。

第一に、書きづらい角度から絵を描かないことです。よく「左向きの顔しか描けない」というのが絵が下手な人間の特徴として挙げられますが、大事なことは絵を完成させることであり、手技を磨くことではないので、できることを確実にやるようにします。中望遠レンズを使った平面的な絵で、手先や耳のような描きづらい身体の部位を含めないようにします。

ラフから下書きに移行する際に書きづらい要素を排除した例
ラフから下書きに移行する際に書きづらい要素を排除した例

首を妙に傾けた絵は印象的ですが、書きづらくなるので下書きにする際に修正しました。

形を捉えられていないという問題は、比率の問題に置き換えることができます。結局のところ絵というのは「どのぐらいの長さの、どのぐらいの曲率の線をどういう位置においていくか」という問題に抽象化できますので、特に難しい顔の部位については、気に入った絵の要点の比率を求めてそれに応じて配置するだけで大分難易度を下げることができます。

また、補助線も有効な手段です。「鼻は顔の中心に大体位置する」といった基本的な事項も重要ですし、上手い絵に定規をあて、絵のある特徴点から垂直や水平に補助線を引いたとき、ほかの特徴点がどこに位置するかを仔細に観察し、自分の絵にも同様に補助線をひいて特徴点同士の関係を適用することで絵の精度を上げることができます。

比と補助線の利用
比と補助線の利用

上手い絵を丁寧に観察して、要点を見つけ出すことが効率化への近道です。

大きさがおかしい

問題

物体それぞれの形が整っていても、組み合わせた時の大きさがおかしいと、大変な違和感を生じさせます。

対処

部位ごとに選択して、拡大縮小を行って整えます。境界部を修正すれば問題ありません。

大きさの調整の例
大きさの調整の例

線が滑らかでない

問題

線が滑らかでないと、絵の問題点が強調されます。

対処

第一に、長い滑らかな線を必要とする要素を絵から取り除きます。長髪の女性は真っ先に排除すべき存在で、これが存在すると大変な苦労を要することになります。またカチューシャやネックレスといった人工物を排除します。

第二に、線の数を絵から減らします。線が多ければ多いほど、滑らかでない線を生産する危険性が高まるので、線を減らすことによってこれに対抗します。

ショートカットとシンプルなトップスで線の方を減らすことで品質を高めやすくした例
ショートカットとシンプルなトップスで線の方を減らすことで品質を高めやすくした例
ロングヘアにMOLLEシステムのベスト、そしてハンドガンという最悪の組み合わせの例
ロングヘアにMOLLEシステムのベスト、そしてハンドガンという最悪の組み合わせの例

一番簡単な攻撃的対抗策は、線をすばやく引いてしまうというものです。この方法は、安直ですがかなり効果的なものです。反面、線の位置精度を維持しづらいという問題があり、使いどころを考える必要があります。

もう一つの方法として、作画用ソフトウェアの補正機能の設定値を大幅に上げ、コンピュータに任せるという方法があり、これも効果的ですが、設定値によっては動作が緩慢になり、書きづらくなることがあります。なお、今回はCLIP STUDIO PAINT上にて補正値を40に設定しています。

別の原因として筆圧が一定でないために、線の太さが一定にならない場合がありますが、これは筆圧感知を無効化することで対抗できます。

また、人間の腕の構造上、ペンを横方向に精度高く動かすことは難しいものです。このため、縦方向に引く線より、横方向に引く線の方が滑らかで正確なものとなります。従って、横方向の線は、作画用ソフトウェアの機能を使い、画像自体を回転させて縦方向の線とすることで滑らかにします。

さらに、まったく別方向からの対処法として、ベジェあるいはスプライン曲線で描画するあるいは線をすべてベジェあるいはスプライン曲線でかたどってしまい、それを塗りつぶすという手法があります。これはきわめて滑らかな線を獲得できますが、大変な苦労を要する上に、手書きらしい入り抜きなどが作りづらく、表現が難しくなるのが欠点です。

様々な線の引き方の例
様々な線の引き方の例

一番左の絵は、なんの対抗策も講じずに描いた絵です。まとまっているように見える人もいるかもしれませんが、線の位置決定精度が低く、とてもアニメ塗りに耐えられるものではありません。真ん中の絵は、できるだけ長い線を素早く書き、また用紙の回転を繰り返して描きやすい方向に引いた線を組み合わせていますが、太さや濃さにムラがあります。一番右の絵は、すべて二次ベジェ曲線で描画した線画です。大変な苦労を要したにも関わらず、固い印象が抜けない絵になっています。

くわえて、人工物などの直線がきれいに書けない場合は、直線ツールや定規ツールを使うのはもちろんのこと、三次元モデルを作ってしまい、レンダリングして貼り込むのも一つの手段です。

仕上げに、線画レイヤを複製し、3ピクセル程度のガウスぼかしをかけると、小さな問題が隠蔽される上に甘い雰囲気になって問題をごまかすことができるため検討をおすすめします。

線にエフェクトをかけた例
線にエフェクトをかけた例

左の画像が元画像、右の画像がガウスぼかしをかけた線画を重ねた画像です。細すぎて自己主張の薄かった線が復活し、ついでにベジェ曲線で描いた絵特有の固さを僅かながら軽減することに成功しています。

色が整わない

問題

絵柄にもよりますが、色の選択を誤ると、絵の問題点が強調されます。また、色を塗らない方がよかった、という致命的な結果になることも充分にありえます。

対処

気に入った色合いの絵から色を拾い出して適用します。

むすび

この記事では絵を描くための資料や道具の調達について述べた後に、いくつかの絵が下手に見える点について、手技に頼らない対抗策を解説しました。