編集時の映像効果によって、発砲を表現する

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まえがき

発砲を映像で表現するためには、実銃において実包や空砲を使用する方法や、火薬式あるいは電気式のモデルガンを使用する方法があります。しかし、前者を日本国内で法規制に従って行うことは非常に困難です。後者も入手できる銃の種類が限られ、危険があり、経済的にも負担が大きく、用具の整備にかかる負担も大きく、近隣への配慮も多く必要となります。

この記事では比較的入手しやすい、ガス圧あるいは電力によって作動し、BB弾を発射する遊戯銃を利用して、銃器の発砲を映像で表現するためにコンピュータ上で映像効果をつける方法について述べます。

この記事は、現行法においてその所持と適切な利用が認められているとわたしたちが捉えている、遊戯銃を利用した発砲の映像表現の方法について記しています。わたしたちは法律についての専門家ではなく、また法律の専門家を擁しておりませんので、法律についての解説は行いません。実際の撮影については、ご自身の責任で行ってください。

なお、以後、この記事では遊戯銃を単に「銃」と記すことがあります。

遊戯銃を発砲表現の素材として使う際の注意点

遊戯銃はそもそも、BB弾を法規制に従った速度で射出しながら、集弾や射程といった銃本来の性能を可能な限り高めている、という高精度な装置です。さらに実銃を発砲したときに感じるそれと似通った反動を射手に与える必要もありますし、競技等で粗雑に扱っても容易に破損しないような強度を持たせる一方で、悪意を持つ者によって実銃として使用可能な様態に改造できないよう、実銃として必要な強度を持たないことが求められています。

これらの矛盾に満ちた設計に対する要求は、静止しているBB弾に対して力を与える機関部、とくにBB弾に伝わらなかった力を受け止める部分が脆いことによって実現されています。

発砲表現の撮影の際には、役者や技師等の人体や、機材あるいは建築物等に対して銃口を向けて発砲する必要性があるため、撮影時にBB弾を装填してはなりません。しかし、BB弾を装填せずに遊戯銃を作動させる空撃ちを行えば、銃の機関部に対して設計外の衝撃を与えることとなるため、それによって破損する確率は格段に高くなります。

したがって、遊戯銃を発砲表現の素材として使用するために作動させる場合は、その破損の可能性について充分承知した上で行うべきです。また、作動させない場合は、反動を演技したり、銃を作動させたときに銃自体に起きる視覚的に明らかな動きについて、何らかの措置を講じなければなりません。

銃の調達

映画のための発砲表現である以上、その銃器は演出意図に基づき選定されるべきです。この節では、必要な種類の銃が複数種の遊戯銃として発売されている場合において、銃を調達するにあたって、どのような点について注意すべきか記します。

品質

外観

銃の外観が実銃と違うと、現実感が薄れたり、玩具であると容易に見抜かれることがあります。そもそもの仕上げ処理に差があることもありますし、製造元の刻印等がなされている場合もあります。

製造元の刻印等はパテなどを利用して埋めることをおすすめします。

動作の再現

実銃における自動拳銃あるいは連射が可能な銃は、装薬の発火によるガス圧が弾丸を発射したのちに、薬室を解放し、空薬莢を排出しながら弾倉内に格納された次弾を薬室へ装填します。このため、実銃の動作を簡単に映像上で再現するために、発砲時に遊底が作動するブローバック機能を持つ銃を選択すべきです。とくに、自動拳銃の場合、その動きが外観を大きく変化させ、非常に目立つため、注意すべきです。

軽機関銃あるいは自動小銃の遊戯銃の場合は、発砲時に遊底が作動しないものが数多くあります。こういった銃の排莢口が明らかな状態で発砲動作を撮影し、排莢を映像効果で追加すると突然薬莢が出現することになるため、撮影時に排莢口が見えにくくなるよう注意する必要があります。

駆動部

駆動部の工作精度が低い粗悪品は、故障によって、撮影の円滑な進行に支障を来すおそれがあります。雑誌やインターネット上の評判を参考にして、信頼のおける駆動部をもつ銃を選択します。

作動方式

ガス圧

ガスガンと呼称されるガス圧で作動する遊戯銃は、耐久性に優れる利点があります。一方で、ガスを適当な温度で安定して供給する必要があるため、稼働状態を維持することが難しいという欠点があります。

電力

電動ガンと呼称される電力で作動する遊戯銃は、稼働状態の維持が簡単という利点があります。一方で、機関部に精密部品を多用していますので、空撃ちに対する耐久性が低くなっていることが欠点です。

銃の運用

周囲への配慮

たとえ殺傷能力がなく、銃に詳しい関係者から見れば明らかに実銃でなく、遊戯銃だと判別可能であったとしても、銃は日本国内で所持を基本的に禁止された殺傷のための道具であり、その姿形に恐怖を覚える人が大勢いることを忘れてはなりません。

銃は基本的に銃が中に入っているとわからない鞄や箱に格納しておき、必要な場合のみ取り出すべきです。また、銃はその管理者が常時携帯あるいは他者によって干渉不可能な場所に確保する必要があります。銃を放置するようなことがあってはなりません。

銃を使用して撮影する際は、銃を使用することについて、撮影許可を取得する際に伝えるべきです。さらに、撮影の様子が、撮影に無関係な人間から見える場合は、その銃が撮影の用途に供されていることが明らかであるように配慮します。可能な限り、無関係な人間が銃に近づいたり、その姿を見ることのないようにすべきです。

また、銃についての説明を求められた場合はすみやかにその目的と用途等を説明し、可能な限り問題を回避するように努力すべきです。

安全の確保

銃の運用においては、なによりも安全を優先しなければなりません。

たとえ実銃でなく、弾倉や薬室に弾丸を装填されてない状態でも、銃を他人に向けてはなりません。また、引き金に指をかけてはなりません。

映像素材の撮影

距離と方向および移動の制限

遊戯銃を用いて発砲表現の映像素材を撮影する際には、撮影距離と方向について注意すべきです。

距離については、演出上可能な限り銃から離れることをおすすめします。銃が大きく写れば写るほど、映像効果が明らかになりやすく、現実感を削ぐ結果になると予測できます。

排莢口が露わになる方向から発砲動作を撮影すると、銃の内部構造が露わになるため、避けるべきです。

また、映像効果を簡単に処理するために、可能な限り、射手と銃以外の要素は動かないようにすることを強くおすすめします。

役者の演技

役者に反動を上手く演技させないと、発砲の現実感が薄れます。反動が射手に対してどれだけ大きな影響を与えるかは、弾薬の種類や銃によって変わります。インターネット上に存在する実射映像などを参考にすることができます。

光量と露出の調整

充分な照明が用意できるならば、明るい場所よりも暗い場所の方が、映像効果をつけやすい利点があります。これは、暗い場所で火薬を発火させたことによる光で、発砲をより強烈に描くことができ、細かな部分の違和感から観客の目線を逸らすことができるためです。

暗い場所で撮影する場合、露出は明るめに設定しておくべきです。明るい映像を暗くすることは暗い映像を明るくすることに比べて比較的簡単である上、銃火によって明るくなった状態を表現する際に違和感を和らげることができます。

映像効果

この効果では、下に示す発砲表現の映像素材に対し、発砲表現のための映像をつけていきます。以後、この映像を単に「映像素材」と記すことがあります。

使用する機材

ある程度強力な、レイヤを使用できる写真編集ソフトウェアと、映像を連番画像として出力し、連番画像を動画として再構成することができるソフトウェアがあれば、発砲表現のための映像効果は処理できます。

わたしたちは、作業を効率化するため、写真編集ソフトウェアにPixelmator、映像処理ソフトウェアにMotion、3DCGIソフトウェアにmodoを使用し、映像素材に発砲表現のための映像効果をつけました。

作業の設計

遊戯銃を空撃ちしている映像上に三つの要素を追加すると、あたかも実弾を射撃しているかのような映像を得ることができます。最初の要素は銃火で、これは銃口付近に現れます。次に硝煙が必要で、これは同じく銃口付近と、薬室が解放された際に排莢口付近から現出します。最後に回転拳銃等を除いて銃は発砲後に薬莢が排出しますので、これも追加する必要があります。

映像素材では、扉や鉄パイプおよび手摺などの構造物の奥で射手が発砲している様子が写されています。発砲時、銃口はおそらくそれら射手の手前にある構造物の前には出てきていません。したがって、発砲時に光や煙が出ると考えられる薬室や銃口付近はすべて、それら射手の手前にある構造物よりも奥にあることがわかります。

したがって、この映像素材に発砲表現に必要な要素を付加する際には、射手の手前にある構造物の奥に追加される必要があります。

また、映像は比較的明るいですが、室内であることを考えると、銃火が照明に大きな影響を及ぼすはずです。したがって、この明るさは銃火によって照らされた部分のために確保されているものと考えて、仕上がりの映像はより暗くなるものとして作業を行います。

前景の分離

映像素材に対する銃火と硝煙、薬莢からなる追加要素を、射手の手前にある構造物の奥に追加する必要があります。そこで、射手の手前にある構造物を分離します。

実際に前景とそれ以外に画像を分離するよりも、前景部分のマスクを作成した方が後の作業で使い回しやすいため、マスクを作ります。映像素材は前景がほぼ動かないため、マスクは一枚あれば充分です。また、一瞬しか適用されないため、精密である必要はありません。

前景部分のマスク
前景部分のマスク

また、前景部分のうち、扉の部分は、矩形を変形させたマスクを映像処理ソフトウェア上で用意して使用します。

照明の表現

発砲時には、銃火が光を放ち、その周辺は明るくなります。まず、その効果をつけます。

銃火の光を表現するわけですから、発光源は銃火、つまり銃口付近です。また、光は距離の二乗に反比例して弱くなりますから、銃口付近がもっとも明るく、銃口から離れるにつれて次第に暗くなるはずです。これを表現するためのマスクを作成します。

銃火による照明のマスク
銃火による照明のマスク

続いて、映像素材のレイヤを複製し、下にある映像素材のレイヤをガンマ補正で暗くします。これがこのカットの基準となる明るさになります。このレイヤを以後、基準レイヤと記します。

暗くした映像素材
暗くした映像素材

上にある映像素材のレイヤは、レベル補正で白っぽく、調整します。このレイヤを以後、照明レイヤと記します。

照明レイヤ
照明レイヤ

ブルームフィルタを追加して、失われた色味を回復します。

ブルームフィルタを追加し、失われた色味を回復した照明レイヤ
ブルームフィルタを追加し、失われた色味を回復した照明レイヤ

さらに、コントラストを調整して、光の強さを表現します。

コントラストを調整して、光の強さを表現した照明レイヤ
コントラストを調整して、光の強さを表現した照明レイヤ

マスクを適用します。

マスクを適用した照明レイヤ
マスクを適用した照明レイヤ

照明レイヤと基準レイヤを重ね合わせると、このような映像が得られます。

照明の表現を付加した映像
照明の表現を付加した映像

最後に照明レイヤをグルーピングして、不透明度を発砲動作に合わせて変化させます。グルーピングしているのは、これ以後に追加する他の要素も連動して不透明度を変化させるためです。このグループを以後、照明グループと記します。

影の表現

現状では、銃火が射手の手前にあるにも関わらず、銃火の放つ光が射手を貫通して射手の背後の壁も明るくしてしまっています。そこで、射手の影を追加して、より銃火による照明の変化の現実感を高めます。

まず、銃火によって形作られる射手の影を模したマスクを作ります。これも一瞬しか写りませんので、細かいところは想像に任せてかまいません。また、一枚で充分です。影は射手より大きくなりますので、少し大きめの解像度で作画します。マスクの周囲は若干ぼかしてやると影らしくなります。

射手の影のマスク
射手の影のマスク

新たに影をおくレイヤを用意して、マスクを半透明で適当な大きさにして配置します。このレイヤを以後、影レイヤと記します。

影を追加した映像
影を追加した映像

射手自身に射手の影が落ちてしまって不自然なので、影レイヤ自体にマスクを設定し、射手を影の影響から外します。

影の影響から射手を除いた画像
影の影響から射手を除いた画像

さらに、影の輪郭が立ちすぎていて不自然な上に、マスクが射手とあっておらず、射手の輪郭が不自然になっているため、ぼかしフィルタを追加して、これをごまかします。

ぼかしフィルタを適用して輪郭を修正した映像
ぼかしフィルタを適用して輪郭を修正した映像

射手は射撃時に微妙に動きますが、これは影レイヤ全体を微妙に動かすことで表現しても、一瞬ですからわかりません。

影レイヤは照明グループ内の照明レイヤの上に格納して、明るさを連動して変化させます。

銃火の表現

銃火を表現するために、銃火を作画します。これも一枚あれば充分です。3回発砲しているので、回転させて使用すれば違和感も少ないはずです。映像素材で発砲している銃は、銃口に切り込みが設けられているので、それに沿って銃火も流れるだろうと考えて作画しました。煙なのでそれらしいブラシを使って作画すると効率的です。

銃火のマスク
銃火のマスク

また、銃火によって銃口付近には光がにじむとそれらしく見えるので、そのためのマスクも作画しておきます。

銃火による光のにじみのマスク
銃火による光のにじみのマスク

照明グループに新たにレイヤを加えて、マスクを用いて銃火を加えます。このレイヤを以後、銃火レイヤと記します。

銃火を追加した映像
銃火を追加した映像

銃火の輪郭が立ちすぎていて不自然なため、ガウスぼかしをくわえてなじませます。

銃火にガウスぼかしを加えてなじませた映像
銃火にガウスぼかしを加えてなじませた映像

最後に光のにじみを、照明レイヤの追加マスクとして加えます。

銃火周辺に光のにじみを追加した映像
銃火周辺に光のにじみを追加した映像

硝煙の表現

硝煙はパーティクルとして作り出します。パーティクルの放出角度を360度に設定し、不透明度と拡大率を動かして、いかにも火薬によって作られた煙が放出されたというように見せます。放出の瞬間は極めて短い時間で拡散し、次第に緩やかに広がるという演技をつけます。

硝煙を追加した映像
硝煙を追加した映像

排莢の表現

排莢を表現するために薬莢を用意します。作画しても構いませんが、ここでは3DCGIソフトウェアで描いた薬莢を使います。

3DCGモデルとして薬莢を作成することは簡単です。円柱を二つ用意して論理演算で作り出してもかまいませんし、円柱に対して基本的な編集操作をするだけでもそれらしいものが作れます。

CGIによる薬莢の作成
CGIによる薬莢の作成

銃火を模した点光源を一つ配置し、今までの映像処理を適用した映像素材を背景に読み込んで動きをつけます。

CGIによる薬莢の動きの作成
CGIによる薬莢の動きの作成

材質の設定は真鍮あるいはそれに近いものにします。光源の位置さえあっていれば、あとは大域照明まかせで充分です。

描き出された薬莢の映像
描き出された薬莢の映像

基準レイヤの上に新たにレイヤを追加して、薬莢を重ねます。このレイヤを以後、薬莢レイヤと記します。

薬莢を追加した映像
薬莢を追加した映像

薬莢は高速で射出されているので、動きによるブレを追加します。

薬莢に動きによるブレを加えた映像
薬莢に動きによるブレを加えた映像

若干薬莢が明るすぎるようなので、レベル補正で落ち着けます。

レベル補正によって薬莢の明るさを抑えた映像
レベル補正によって薬莢の明るさを抑えた映像

前景の追加

最後に分離しておいた前景を一番手前に重ねます。

音響効果

実際に映画内で使用するときは、現実感のある発砲音を追加すると、より良い仕上がりになります。

むすび

この記事では、遊戯銃を用いた映像での発砲表現について、使用する遊戯銃を選択する際の注意点、映像素材を撮影する際の注意点、およびコンピュータ上で映像効果をつける手順について述べました。

この記事は「2013年度試験映像製作計画」での成果を元に書かれました。