完全なスローモーションの映像を取得するために、高速度撮影を行う

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まえがき

フィルムによる映像撮影において、フィルムの走行速度を上げて、単位時間あたりの撮影コマ数を増加させる高速度撮影(ハイスピード撮影あるいはオーバクランク)で撮影した映像は、通常の速度で取得した映像を再生すると、動きがゆっくりと見える、滑らかなスローモーションの映像となります。これと同じようにデジタルビデオにおいても単位時間あたりの撮影コマ数を高めることが、機材の性能によりますが可能です。

この記事では高速度撮影における機材の調達上および撮影時の注意点について解説し、いくつかの例を示します。

機材の調達

撮影可能速度

高速度撮影のためにカメラを調達する際は、その撮影可能速度に注意を払うべきです。この際には最終的な出力秒間コマ数に対して、何倍の速度で撮影可能かという点に注意します。

最終的な出力秒間コマ数が、映画として一般的24コマであるなら、秒間60コマ撮影できる一般的なカメラを使えば、2.5倍速までは取得できます。なぜなら、秒間60コマ撮影された映像を秒間24コマに再配置すれば良いからです。

特に高速度撮影の機能があることを謳うカメラは大抵の場合、5倍速以上で撮影可能です。この速度に達すれば相当な表現の幅が広がるといえます。

大変印象的な映像を作りたい場合は、10倍速で撮影できることが好ましいです。ただし、この場合あまりに時間が長いと冗長に感じられるために注意が必要です。

高速度撮影時における制限

高速度撮影を行えるカメラの中には高速度撮影時に何らかの制限を加えるものがあります。調達の際には注意が必要です。

画面解像度の低下

高速度撮影可能なカメラにおいて一番多い機能制限がこれです。

高速度撮影は、当然単位時間あたりの情報量が格段に増えます。これは単に撮像素子の露光回数が増えることのみならず、カメラ内の信号処理器に負荷をかけ、その演算能力を食い潰し、記録媒体やそこへの通信経路に大抵の場合許容量を超えた情報量を転送することを求めます。

これらの負荷に対処するための一手法として、カメラによっては画面解像度を低下させるという手法をとっています。画面解像度を低下させれば、単位時間あたりの記録コマ数を増やしても、単位時間あたりの情報量の増加を、記録コマ数の増加比率に比べて低減させることができるからです。

当然、高速度撮影になった瞬間に明らかに画質が低下するため、あまり選択をおすすめできるものではありません。ただし、最終的な出力画面解像度が、高速度撮影時のそれ以下であれば問題は当然ありません。

撮影可能時間

高速度撮影時の負荷増大に対処するためのもうひとつの手法として、カメラによっては高速度撮影の継続時間に制限を加えています。

特に記録工程においては特別に設計されたカメラでない限り、カメラ内の主記憶装置に映像を一旦収録し、時間をかけてこれを記録媒体に転送するという手段をとらざる得ないため、カメラ内の僅かな主記憶装置の容量に高速度撮影が可能な時間が拘束されることになります。

制御の剥奪

この種の制限としては最悪の部類に属します。高速度撮影を行おうとした瞬間、例えば撮像感度であったり絞り値であったりといった様々な撮影時に調整すべき媒介変数の調整を一切不可能にし、機体の自動制御の下のみで撮影を行わせようとするカメラがあります。

大変な幸運に恵まれない限り、意図した映像を、最良の状態で取得することが難しいため、他に特別の事情がない限りこの種の制限を高速度撮影時に設けるカメラの調達は避けるべきといえます。

撮影

光量の確保

高速度撮影を行う場合、当然シャッタ速度も高めなければなりません。例えば秒間240コマを撮影するのなら、シャッタ速度は1/240秒以下になることを求められます。当然露出は低下しますので、撮像感度を上げるか、絞りを開くか、照明を強化して光量を確保する必要があります。

復活の水平線大怪獣奪還計画 撮影試験映像の撮影時においては、光量を確保するために照明を強化しています。撮像感度ISO換算100の絞り値F5.6で1/250秒のシャッタ速度を維持するために大量の照明を必要としていることが、以下に示す写真からもわかります。

高速度撮影時の照明
高速度撮影時の照明

フリッカの回避

シャッタ速度が高まることは、蛍光灯等、高速で明滅する照明下において、映像に致命的な影響を与えます。可能な限り、この種の照明の影響を受けないようにして、必要であれば自前の照明を供給する以外にこの問題の回避策はありません。

実践

単純な例

この高速度撮影の単純な例は、銃を構える役者の髪の毛を揺らすために、野外清掃用のブロワを用いています。この方法は大変手軽な上に画面上に違いを作り出すことができます。

素材の撮影と簡単な特撮

この例では、粉々に砕いた発泡スチロールをまき散らした上に、ブロワでこれを空中で動かして撮影し、撮影後処理で火の粉のように見せています。この例は「巨神兵東京に現わる(2012日本)」で行われたものを参考にしています。

撮影風景
撮影風景

左手に照明、下にブロワの射手と補助照明、上に屑をばらまく二人が確認できます。背景布は適当なものを使いましたが、ハイミロンが最適と言われています。

落ちてきた発泡スチロールの屑を吹き飛ばすために待ち構える射手
落ちてきた発泡スチロールの屑を吹き飛ばすために待ち構える射手

面体は手頃なものがなかったので撮影用の小道具をそのまま使っています。

むすび

この記事では高速度撮影における機材の調達や撮影時の注意点について説明し、また二つの実践例を示しました。

この記事は「2013年度試験映像製作計画」の成果を元に書かれました。