ドリーを開発する

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まえがき

ドリーはカメラを水平に移動させるカメラの動きを正確に行うことのできる道具です。ドリーは大変便利な特機の一つですが、その価格は非常に高価で、そう簡単に調達することはできません。自作することも手段のひとつとして選択肢に入れるべきかもしれません。

この記事では、わたしたちが開発したドリーについて紹介します。

方針の策定と設計

方針の策定

最初期に試作されたドリーレール
最初期に試作されたドリーレール

この時点ではアングル材の中をキャスタが走行する仕様でした。

設計を考える際に描いたスケッチ
設計を考える際に描いたスケッチ

わたしたちはまず、いくつかのドリーの自作例を調査し、また商用製品のドリーについても調べ上げました。またいくつかの試作を繰り返し、最終的に撮影に投入したドリーは以下の方針の元に開発されました。

  • カメラのみを積載するドリーとする
  • 走行は人力で行う
  • 事前に敷設された2本のレールの上を三脚を積載する本体が走行する
  • 本体は片方のレールに三脚の二本の脚が乗り、もう片方に2本の脚が乗る形になる
  • 三脚と本体は養生テープで拘束する
  • レールの下には枕木を配し、これにより路面の段差をある程度解消し、水平をとる
  • 枕木は最終的に木片を地面との間に挟み込んで微調整を行う
  • レールはパイプとし、車輪はこれを一脚に四輪取り付けた出来合いのキャスタによって挟み込む
  • 四輪のキャスタは完全に固定された二つのキャスタと遊動する2つのキャスタにわけ、これによりレールの歪みによって走行不可能になる問題を回避する
  • レールはパイプジョイントで接続する
開発したドリーの正面図
開発したドリーの正面図

図ではレールをすべてのキャスタがしっかりと挟んでいますが、これはあくまで想像図であり、実際にこうするとまったく動作しないため、実際には余裕を持たせた間隔で配置します。

開発したドリーの側面図
開発したドリーの側面図
開発したドリーの上面図
開発したドリーの上面図
開発したドリーの動作イメージ
開発したドリーの動作イメージ
開発したドリー
開発したドリー

上記の方針を反映すると、使用時にはこのような形態になります。

必要な工具

工具

ドライバ

わたしたちはプラスドライバを使い、ネジもプラスネジを使っています。

ボール盤

レンチ

六角レンチ

平やすり

金属用、木材用それぞれ用意することをおすすめします。

紙やすり

のこぎり

金のこ

ソーガイド

斜めに切断するために必要な当て木となる道具です。

金尺

鉛筆と消しゴム

水平器

材料

部品図

図面は各種規格等に乗っ取ったものではなく、あくまで必要な情報を書いたのみです。

部品図の青い線は寸法の指示を、紫の線は穴の位置を、赤の線は切り取りの指示あるいは切り取られて不要となる部分を、黄緑の線は補助線を表します。

このPDFは下記の部品についての記述を印刷して扱いやすいようにしたものです。

材料についての注意点

材料に要求される精度

わたしたちはできるだけ汎用的な部品を利用するようにしましたが、まったく同じ物が手に入らない場合を考えて、 似た大きさの材料でも作れるよう最低限の配慮をしています。したがって、完全に同じ大きさの材料でなくてもこのドリーを製作することは可能と考えられます。

ただし、材料を調達する際には工作工程をしっかりと把握し、特に直接接続される部品同士については、接続が可能かどうか確認した上で 調達することを強くおすすめします。

省略された部品の情報と工作精度

このドリーには設計図が存在せず、現物合わせで製作しているため、特にネジ穴の位置の決定等、 いくつかの作業は組み立て途中に行うことを前提として、部品図に入れていません。

またこれにより、特に切断および折り曲げ加工を要する工作の精度が低い場合も後工程で誤差を収斂できます。 最終的に残った誤差はレールの歪みを許容するための仕組みで影響を打ち消すことができます。

しかし、最低限の工作精度は必要なため、可能な限り高い精度で工作してください。

三脚マウントの材料

M01:アルミ板

  • 三脚を効率的に固定するために使います。
  • 3つ必要です。
  • アルミ板から切り出し、折り曲げて作ります。
  • 切断加工ならびに折り曲げ加工には切りしろあるいは曲げしろが必要です。調達時には余裕を持って調達することを強くおすすめします。
M01:アルミ板(SVGファイル)
M01:アルミ板(SVGファイル)

M02:アルミ板

  • 三脚を効率的に固定するために使います。
  • 6つ必要です。
  • アルミ板から切り出し、折り曲げて作ります。
  • 切断加工ならびに折り曲げ加工には切りしろあるいは曲げしろが必要です。調達時には余裕を持って調達することを強くおすすめします。
M02:アルミ板(SVGファイル)
M02:アルミ板(SVGファイル)

本体の材料

B01:アルミ角パイプ

  • ドリーの本体となります。切断加工を必要としますので不必要に分厚いものを使うと、場合によっては後の作業が大変なことになりますので、ご注意ください。
  • 購入時に大まかな切断加工を頼めるのであれば頼んでしまうのも一つの手です。
  • 切断加工には切りしろが必要です。調達時には余裕を持って調達することを強くおすすめします。
  • この部品のネジ穴開け加工は位置、間隔ともにこのドリーの製作工程において最も高い水準の精度を要求します。
B01:アルミ角パイプ(SVGファイル)
B01:アルミ角パイプ(SVGファイル)

B02:アルミ角パイプ

  • ドリーの本体となります。切断加工を必要としますので不必要に分厚いものを使うと、場合によっては後の作業が大変なことになりますので、ご注意ください。
  • 2つ必要です。
  • 購入時に大まかな切断加工を頼めるのであれば頼んでしまうのも一つの手です。
  • 切断加工には切りしろが必要です。調達時には余裕を持って調達することを強くおすすめします。
  • この部品のネジ穴開け加工は位置、間隔ともにこのドリーの製作工程において最も高い水準の精度を要求します。
B02:アルミ角パイプ(SVGファイル)
B02:アルミ角パイプ(SVGファイル)

B03:丁字隅金

  • B01とB02をつなぎ合わせるために使います。
  • ネジ穴が空いているものを選び、取り付け時に現物合わせでB01およびB02側に穴開け加工を行います。
B03:丁字隅金(SVGファイル)
B03:丁字隅金(SVGファイル)

車輪部の材料

C01:キャスタ

  • 12個必要です。
  • わたしたちが使ったものはタイヤの径が40mm、厚さが17mmでした。同等の物を用意することを強くおすすめします。
  • タイヤのみではなく、車軸や軸受け、取り付け金具等が共についたものを用意します。

C02:L字金具

  • C05とB01あるいはB02をつなぎ合わせるために使います。
  • 3つ必要です。
  • C05との接続のために、ネジ穴が空いているものを選ぶか、自ら開けます。わたしたちが使ったものはネジ穴の径が5mmでした。
  • この部品のネジ穴開け加工は間隔についてこのドリーの製作工程において最も高い水準の精度を要求します。
C02:L字金具(SVGファイル)
C02:L字金具(SVGファイル)

C03:黄銅棒

  • C02をB01あるいはB02に取り付けるために使います。
  • 3つ必要です。この図には3つ分描いてあります。
  • アルミ板から切り出して作ります。
  • 切断加工には切りしろが必要です。調達時には余裕を持って調達することを強くおすすめします。
  • この部品のネジ穴開け加工は間隔についてこのドリーの製作工程において最も高い水準の精度を要求します。
C03:黄銅棒(SVGファイル)
C03:黄銅棒(SVGファイル)

C04:平金具

  • 2つのC01をこれに取り付け、これをC05に取り付けます。
  • 6つ必要です。
  • C01との接続のために、ネジ穴が空いているものを選ぶか、自ら開けます。わたしたちが使ったものはネジ穴の径が6mmでした。
  • C05との接続のために、ネジ穴が空いているものを選ぶか、自ら開けます。わたしたちが使ったものはネジ穴の径が4mmでした。
C04:平金具(SVGファイル)
C04:平金具(SVGファイル)

C05:L字金具

  • C04とC02をつなぎ合わせるために使います。
  • 6つ必要です。
  • C04およびC02との接続のために、ネジ穴が空いているものを選ぶか、自ら開けます。わたしたちが使ったものはネジ穴の径が6mmでした。
C04:平金具(SVGファイル)
C04:平金具(SVGファイル)

C06:アルミ板

  • C04とC02をつなぎ合わせるために使います。
  • 6つ必要です。
  • C04およびC02との接続のために、ネジ穴が空いているものを選びます。わたしたちが使ったものはネジ穴径が6mmでした。
  • 2mmのアルミ板を折り曲げて作っているのは、強度を確保するためと、丁度良い厚みの材料が存在しなかったためです。したがって、より良い材料があればそれを使うこともできます。
  • 折り曲げ加工には切りしろあるいは曲げしろが必要です。調達時には余裕を持って調達することを強くおすすめします。
  • この部品のネジ穴開け加工は間隔について、このドリーの製作工程において最も高い水準の精度を要求します。
  • 作図の都合上、両端を完全に折り曲げていますが、実際は適当な角度で止めています。CGIは実際のそれに近い状態にしてあります。
C06:アルミ板
C06:アルミ板

レールの材料

無限に連結可能な方式にしてありますので、必要なだけ調達してください。

R01:ステンレスパイプ

  • 25mm径のものを調達してください。
  • レール本体となります。
  • 長さは取り回しやすい長さに抑えてください。私たちは1800mmにしています。
    • 余り長いと輸送に問題が出ます。
  • 購入時に大まかな切断加工を頼めるのであれば頼んでしまうのも一つの手です。
  • 切断加工には切りしろが必要です。調達時には余裕を持って調達することを強くおすすめします。

R02:パイン材

  • 枕木となります。
  • R01を支えられるだけの数が必要になります。わたしたちは長さ1800mmの2本のR01を2本のR02で支えました。
  • 切断加工には切りしろが必要です。調達時には余裕を持って調達することを強くおすすめします。
  • パイン材が一番安かったのでわたしたちはこれを調達しましたが、特にこだわりはありません。
  • 購入時に大まかな切断加工を頼めるのであれば頼んでしまうのも一つの手です。
R02:パイン材
R02:パイン材

各種結合用部品

RJ01:パイプジョイント

  • レールの継ぎ手となります。
  • ステンレスパイプの規格にあったものにします。
  • 表面に段差が現れない中埋め式のものを選択します。

その他ネジ類

調達した部品によりますが、いくらかネジ、ボルトとナット、ワッシャが必要になりますので、下記の手順を参考に調達した部品のネジ穴の径などを元に必要数調達します。

組み立て

組み立てについての注意点

末端部の処理

金属を切り出して製作する都合上、末端部は大変鋭利になることがあり、ケガの原因となることが充分に予想できます。 特に組立手順には含めていませんが、ケガの防止のため、適宜ヤスリがけを行う等の末端処理を行ってください。

レール用部品の加工

R02の加工

レールを置く場所を作るために、部品図の指定通りにくさび形に切り込みを入れます。

斜め45度の切断を要求されますが、ソーガイドを使うと簡単にできます。

R03の加工
R03の加工

R01の加工

R01が長すぎる場合は、パイプカッタでこれを適当な長さに切断します。

RJ01の取り付け

ジョイントの方式にもよりますが、R01への取り付けが必要なパーツがある場合はこれを取り付けておきます。

三脚マウントの組み立て

3つ作ります。

M01の製作

A01を必要であれば材料から切り出し、折り曲げて作ります。

M01の加工
M01の加工

M02の製作

M02を必要であれば材料から切り出します。

M01とM02の仮組

仮組を行い、両者をつなぎあわせるために必要なネジ穴の位置を決定します。わたしたちは一つのネジでM01とM02をつなぎあわせています。

三脚マウント
三脚マウント

M01とM02の穴開け

ネジ穴の位置を決定したら、M01とM02それぞれにネジ穴を開けます。また、後にM02をB01あるいはB02に取り付けるためのネジ穴が必要になりますので、組み立て前に開けておきます。

このとき、下記の手順に一通り目を通した上で、B01あるいはB02と仮組してある程度安全にネジを通せる場所にネジ穴を開けることを強くおすすめします。わたしたちは三脚マウントをそれぞれ一つのネジでB01あるいはB02に取り付けています。

三脚マウントの組み立て

M01とM02をつなぎあわせ、三脚マウントを組み立てます。

車輪部の加工と組み立て

三つ作ります。

C04とC05の組み立て

C04にC05をネジとナットで取り付けます。これは6つ作ります。なお、うち3つは緩く締めておき、レールの設置誤差を受け止めるための回転が可能にしておきます。

C04とC05の組み立て
C04とC05の組み立て

C01の取り付け

C04にC01をそれぞれ二つずつネジで取り付けます。

C01の取り付け
C01の取り付け

作図の関係上、C01の車軸、軸受け等が省略され、車輪が宙に浮いているように見えますが、実際はC01に元々ある金具を使ってネジで取り付けます。

C02への穴開け

部品図に従いC02に穴を開けます。

C02への穴開け
C02への穴開け

C02への取り付け

C02にC05をそれぞれ二つずつネジで取り付けます。なおこの取り付けによって、完全にタイヤ同士が衝突してしまうとまったく走行できなくなるため注意してください。

C05のC02への取り付け
C05のC02への取り付け

C06の製作

C06を必要であれば材料から切り出し、折り曲げて作ります。また、部品図に従いC06にネジ穴を開けます。

C06
C06

C03の製作

C03を必要であれば材料から切り出します。また、部品図に従いC03にネジ穴を開けます。

C03
C03

本体の組み立て

B01とB02の製作

B01およびB02を必要であればアルミ角パイプから切り出します。また、部品図に従いネジ穴を開けます。

B01
B01

三脚マウントの取り付け

仮組を行い、三脚マウントを取り付けるためのネジ穴の位置を決定します。

三脚マウントを取り付けたB01
三脚マウントを取り付けたB01

仮組みしたM02のネジ穴と揃う位置にB01あるいはB02へネジ穴を開け、それを使って三脚マウントを取り付けます。

組み立て

仮組を行い、B01とB02の各部品をつなぎあわせるB03を配置して、ネジ穴の位置を決定します。 ネジ穴の数と位置は、調達したB03に左右されますので、現物合わせで行ってください。

B01をB03によってつなぎあわせた状態
B01をB03によってつなぎあわせた状態

仮組みしたB03のネジ穴と揃う位置にネジ穴を開け、それを使ってB03とB01およびB02を組み立てます。

最終組み立てと作動試験および調整

最終組み立て

B01あるいはB02とC06、C03そしてC02を貫通する径3mmのボルトとナットを使い、車輪部を本体に取り付けます。

B01に取り付けられた車輪部
B01に取り付けられた車輪部
B02に取り付けられた車輪部
B02に取り付けられた車輪部

作動試験および調整

組み立てが終わったら作動試験を行います。

R02をおいて、その上にR01を置き、さらに車輪を取り付けたドリー本体をおけば、準備完了です。

稼働体制にあるドリー
稼働体制にあるドリー

調整の詳細はおきた問題によって変わりますが、基本的に部品同士の干渉を回避するための手を打つ作業となります。

実際の使用における注意点

設営

設営時には可能な限りレールが水平になるように調整します。このために水準器を使い、状態を計測し、またR02の加工時に出た木片を使ってR02の角度を調整します。

被写体との距離

枕木を仮置きしている様子
枕木を仮置きしている様子

ドリーを実際に使う場合は、カメラの位置が変わるため、焦点に注意する必要があります。

広角レンズを使いさらに絞り込んで被写界深度を深くとる、被写体とカメラの距離を等間隔に保つ、あるいは適時適正に焦点を調整しながら撮影するといった方法で、 画像の鮮明度が保たれるようにしてください。

設営の準備作業
設営の準備作業

被写体の動線とドリーレールを平行に保つために指示用の養生テープを床に貼ります。

設営されたドリーレール
設営されたドリーレール

レンズの選択

このドリーは有効な耐振機構を持っていないため、広角レンズを使用して、振動の映像に対する影響を軽減することを強くおすすめします。

撮影試験とその結果

撮影試験

わたしたちは「復活の水平線大怪獣奪還計画・撮影試験映像」の撮影でこのドリーを試験しました。室内、屋外、また縦横両方向で試験し、映像を収録し、一部は完成作品に使用しています。

結果

屋内での使用

最初のドリーの本格的な投入は屋内で行われました。映像ではレールの接合部で明らかな振動を観測できます。なお、この問題は予測されていました。また、設営にかなりの時間を要しました。

屋外での使用

屋外に敷設されたドリーレール
屋外に敷設されたドリーレール

屋外でもドリーは所定の性能を発揮しています。この際には、前回に比べ極めて短い時間での設営に成功しました。自作ドリーの効率的な運用には、この装置の仕様と特性に精通した技師が必要不可欠です。

縦方向での使用

縦方向でのドリーの利用例
縦方向でのドリーの利用例

カメラが手前に来た際にレールが写ってしまうことを防ぐために、望遠レンズを使用しています。この場合は役者とドリーが同じ速度で動くことによって焦点距離を維持しています。

最後に縦方向にドリーを使用することを試みました。レールが映り込むことを防ぐために、100mmの望遠レンズを使用していますが、これにより、よりブレは大きくなり、ほとんど見るに堪えない映像が収録されました。なお、Final Cut Pro Xの手ぶれ補正機能はこの手ぶれになんの効果も示さず、事態をより悪化させていることが動画からわかります。

今後

試験結果はこのドリーが大変振動を拾いやすく、これに対する対策が急務であることを示しています。

わたしたちは今後、ドリーにサスペンションなどの振動を吸収するなんらかの仕組みを加えていくことを考えています。

むすび

この記事には、わたしたちが数回の試験を経て構築したドリーの開発方針と概要について述べ、その後その構築に必要な工具と材料、その組み立てについて記しました。またこのドリーの試験とその結果について示し、今後について記しました。

この記事は「2013年度試験映像製作計画」の成果を元に書かれました。一部の撮影はロングウッドステーションにおいて行われました。