少ない人数で撮影隊を編成する

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まえがき

映画を撮影しようとするときは、どれだけの規模の撮影隊を編成し、どう仕事を割り付けるか、ということが問題になります。しかし、映画を撮影するために必要な人数は映画によって変わります。

また、低予算映画の場合、撮影隊に動員できる人数が限られていることは日常茶飯事です。したがって、動員できる人数をどう活用すべきか、ということが問題になります。人を集めるとしても、どんな仕事をしてもらうか、前もって決めておくと、集めることが簡単になります。

最低でも一人いれば、映画を撮影することは十分に可能です。しかし、人数を増やすと、映画の品質を高めたり、作業を効率化したり、表現の自由度を高めることができます。

この記事では、まず、撮影隊を編成し、その規模を成長させていく際に、どういった考え方を持って、役職を増やし、仕事を割り付けていくかについて述べます。続いて、一人から十人程度の規模まで撮影隊の規模を成長させるにあたって、具体的にどのように仕事を割り付けていくかについて述べます。

撮影隊の編成におけるいくつかの基本的な考え方

技師とその助手

撮影には、少なからず、機材を操作し、適切に制御する技術を要する仕事があります。その種の仕事をする技師にとって重要なのは、機材の操作と、それによって得られる結果の品質を高く保つということです。

したがって、撮影隊の人数を増やすときには、技師にかかる負荷を請け負って、繊細な作業に集中できるようにする助手を増やしていくべきです。例えば撮影に関するあらゆることを、一人の撮影技師が担当しているのなら、カメラから離れ被写体の近くに立ち、レフ板を持って被写体にあたる光の量を多くする役目を、助手を増やして任せます。そうすると、撮影技師は、撮影中にどんな映像が収録されているのか、目で確認することができるようになります。

兼務

小規模な撮影隊の場合、すべての作業に専門の仕事を受け持つ人員を配置することはできません。基本的に兼務となり、様々な作業をすることになります。ですから、撮影隊の規模の成長に伴って、仕事を割り、できるだけ集中できるようにしていくのが、基本的な方針となります。

しかし、単に兼務、という形にするにしても、全ての仕事を等分割して、兼務するという形にすることは、すすめられません。特に集中した方が良いことと、他の仕事とでも並行して行いやすい仕事があるからです。また、仕事において必要となる知識の分野や、仕事をする物理的な位置も考えて、兼務する仕事を決めていく必要もあります。

とはいっても、撮影隊の規模が小さいうちは、小さな仕事の大部分を兼務する人が必要になります。そこで、撮影隊の後者の作業をまとめて担当するものを数名おいて、撮影隊の規模の成長に応じて、彼らの仕事から集中して行うべき仕事や、それと同じ分野の仕事、また平行して行いやすい仕事を分割して、新しく増えた人員に割り付けていく、という形で、仕事を分散させていきます。

管理と記録

撮影の際には、様々な情報が記録され、また変化していきます。ある程度の規模に撮影隊が成長したら、これを把握し、管理し、また、永続的に記録するために専門の役職をおくことをおすすめします。

特に重要なのは、収録されたデータの管理です。収録されたデータは、撮影において取得される、最も価値ある資産です。収録機器が使用する記録媒体と、永続的に記録する記録媒体の間でデータを転送したり、適切に記録を多重化することは大切な作業です。また、容量あたり単価の高い記録媒体を再利用する際に安全に初期化するために、全てのデータの記録状況を完全に把握することが必要になります。こういった重要度が高い作業には、専門にそれを担当する人物を撮影隊に組み入れるべきです。

一人から二人

この章では、映画を撮影するために最低限必要で、撮影隊の人数が増えた場合でも、要となる役職を説明します。

監督

一般的に映画監督は、現場において、専用の椅子に座り、メガホンで合図を出したり、あれこれ指図をしたり、思案に耽ったりしているものと考えられていますが、低予算映画の場合、そんな人物を現場に置いておく余裕はありません。しかし監督不在での撮影は破綻への近道ですから、監督は他の仕事を兼務しつつ、監督としての仕事を行うことになります。

監督の仕事は、質問に答えることです。映画の撮影では、大抵の場合、予測していなかった事態、判断に困る状況が発生します。撮影現場の様々な場所で、様々な人の心に浮かんだ、その疑問に答えるのが、監督の仕事です。

撮影技師

カメラマンとも呼ばれるこの役職は、映画を撮る以上絶対に必要な役職です。この役職を担当する人さえいれば、とにかく映画は撮影できます。つまり、他の仕事は撮影技師との兼務との形で行われます。したがって、人数が増えた場合、一人しかいない撮影技師がすべて行うことになっていた、仕事を分割して割り付けていくことになります。

撮影技師の本来の仕事はカメラを管理および制御し、映像を記録することです。この仕事は最も重要な仕事なので、仕事を割り当てられた人は、撮影機材やその周辺技術についてよく勉強し、また訓練しておく必要があります。複数名の撮影技師を撮影隊に組み入れる場合は、役者の稽古と同じように、稽古を行う必要があります。

撮影隊の人数が増えてきたら、できるだけ、撮影技師がカメラの側から離れず、カメラの管理と制御に集中できるように仕事を分割して、他の人に割り付けていきます。

助監督

撮影技師以外に人員を確保できるならば、その最初の一人が担当する役職は助監督とすべきです。

助監督の本来の主な仕事は日程管理ですが、撮影隊に最初に組み入れる助監督には、大規模な映画ではセカンド助監督と呼ばれる役職の仕事、つまり、現場を進行させていく仕事を中心に、撮影技師が作業する場所であるカメラから離れた場所で行う仕事を分割して割り付けます。特に撮影中に撮影技師がカメラから離れることは難しいので、多くの仕事を駆け回ってこなす能力が必要です。さらに低予算映画では、助っ人として借り出されることが多いポジションなので、あらゆることにとっさに対応できる柔軟性も必要です。

撮影隊の人数が増えてきたら、集中しなければならない仕事を優先的に助監督の仕事から取り除き、他の人に分割して割り付けていきます。これは、困ったときに何時でも動ける人として助監督を活用しやすくするためでもあります。

三人から五人

この章で説明する役職を担当する人員を揃えれば、効率的に撮影することができます。

また、注意すべき点として、この章の規模を超えて撮影隊を編成すると、維持と制御に対して労力を割かなければならない、という点をあげることができます。くわえて、機材が充実していない場合、これ以上の人員は単に撮影の邪魔にしかならない、ということもあります。

人数だけが増えてしまった場合は、二つの部隊を編成して、不測の事態に対応できるようにしたり、休憩時間を多く取れるように配慮するのも一考です。

撮影助手

撮影技師には多大な負荷がかかっていますので、その負荷を分割して担当するのが、この役職です。

原則に従って、撮影助手には撮影技師からカメラから離れて行う撮影に関する仕事を割り付けていきます。最も重要な仕事は露出計による露出の決定で、この仕事は大抵の場合、俳優の近くで行う必要がありますので、撮影技師が行うと手間がかかって仕方がないため、撮影助手が行うべきです。このほか、精密な操作を必要とする焦点の制御や、撮影されている映像を見ながら行うことが難しいカチンコの操作も、撮影助手が行うと良いといえます。

録音技師

音声の同時録音を行う場合には大切な役職です。

専用の録音機か、カメラに接続されたモニタ用のヘッドフォン等を通じて、録音されている音を確認し、録音に関するあらゆる仕事を行います。こちらも技術的な仕事ですから、仕事を割り当てられた人は、録音機材やその周辺技術についてよく勉強し、また訓練しておく必要があります。複数名の録音技師を撮影隊に組み入れる場合は、役者の稽古と同じように、稽古を行う必要があります。

また、Pathfinderでは、映像と音声の同期処理の効率化のために専用のカメラを用意しましたが、その操作は録音技師が担当しました。

撮影隊の人数が増えてきたら、録音技師が録音されている音の品質管理を集中して行えるように、仕事を分割して、他の人に割り付けていきます。

助監督の増員

撮影隊がこの規模になったら、助監督を増やしておきます。

六人から十人

この規模になってくると、予算さえ許せば、同時に複数の撮影機材や録音機材を動かして、編集の自由度を格段に高めたり、予備の素材を収録することができます。

録音助手

録音機器が充実してきたら、録音技師に助手をつけます。

撮影助手と同じように、録音技師が、微妙な力加減が必要なマイクの操作をはじめとする、収録されている素材の品質管理に集中できるように、比較的簡単な録音機器の操作や、録音したデータの管理などを担当するのが録音助手です。

撮影技師と撮影助手の増員

カメラを複数台にすれば、同じ時間を別の画角から撮影できます。その際、複数台のカメラの完全な同期を行うためにはカメラ一台につき、撮影技師と撮影助手をつけるべきです。

機材

機材が増えてくるとその管理や、維持、また整備も必要になってきます。この役職は、それらの仕事を担当します。

また、収録に使用する機材が増えてくると、収録される素材の量も比例して多くなり、記録媒体の管理や、予備の記録も必要になります。機材係は、それらの仕事も任せます。特に大事なのは、すべての素材を多重記録し、適切に収録機器に挿入する記録媒体を使い回せるよう、初期化することです。責任が重大なため、手順書等を用意して、失敗のないように準備します。

記録

記録といってもいろいろな記録がありますが、ここで取り上げる記録という役職は、撮影という活動自体を記録する役職です。

撮影は、それ自体がとても楽しい行為です。そして、そこには本編と同じぐらい素敵な世界が広がります。それを記録することは、そう簡単には得ることのできない素材を記録することであり、また、次回作に向けて様々な改善点を見つけるための情報を収集することでもあります。もちろん、形になった思い出を財産にすることもできます。

十人もいる大きな撮影隊を編成する余裕があるのなら、そのうちの一人に静止画用のカメラでも、ビデオカメラでも良いので持たせ、撮影現場それ自体の記録をすることをおすすめします。

むすび

この記事では、撮影隊を編成する際の基本的な考え方について述べ、一人から十人程度まで撮影隊の規模を成長させる際に、役職を増やし、仕事を割り付けていく流れを説明しました。